秋の味覚のひとつ『さつまいも』。いろんな種類のものがあり、メジャーなものだと『紅あずま』『鳴門金時』『安納芋』など。お菓子の材料によく使う『紫芋』もありますね。そんな中、
『黄金千貫(こがねせんがん)』
というちょっと変わり種のいもがあります。今回は『黄金千貫』について、おおまかな特徴や料理のポイントなど簡単に書いていこうと思います。
『黄金千貫』ってどんなさつまいも?
元々焼酎用のさつまいも
さつまいもと聞くと焼き芋などの食用をイメージしがちですが、このいもは『お酒をつくるのに適したさつまいも』です。
『芋焼酎』ってあるよね?アレだ
もちろんこの種類だけ使うわけではないとは思いますが、おそらく鹿児島あたりで芋焼酎の原料のいもと聞けばこの品種をイメージする人が多いのではないでしょうか。
地元で作っている農家さんがいれば、食用としてお店に並ぶことがあります。スーパーなどのきっちりした野菜売り場より、どちらかというと直売所あたりで見かける印象。
色が白い!!
さて、特徴を見ていきましょう。
まず見た目から異なります。
普段よく食べられているさつまいもと異なり、『黄金千貫』は薄茶色というか、クリーム色に近いような色をしています。
実際に並べてみるとこんな感じです。両方いったん洗って軽く拭いてから撮影したもの。(※上のさつまいもは品種が書いていなかったので詳しい品種は不明)
こう見ると全然違うね
果肉の色も白い!!
次は切って断面を見てみます。
どうでしょう。普通のさつまいもの果肉のほうがほんのり黄色っぽいのがおわかりになるでしょうか。
う~ん、生だと普通のさつまいもも果肉の色が白っぽいからコレだとちょっと分かりづらい気がする……
じゃあ焼いてみようか
トースターで焼き芋にしました↓
あ、コレならわかりやすい
加熱したさつまいもは鮮やかな黄色になるのですが、黄金千貫は相変わらず白っぽい色。真っ白ではなく、ちょっと暗めの白かな?という感じです。
小型のものが多い?
わたし自身は栽培経験が無いのでそのあたりはあまり詳しくはない…ということは先にお伝えしておくのですが、少なくとも生鮮食品として売られている黄金千貫は細かったり短く丸っこかったりと、全体的に小さいサイズのものが多いです。
その分野の知識は明るくないからあくまで予想ではあるんだけど、たぶん大きいサイズは焼酎の加工用として出荷されて、残りの加工しづらい小さいサイズのものが食用として出回るんじゃないかな……?
(※予想なので違ってたら申し訳ありません)
たくさん袋に入ったものが売っていることがありますがその割にはお値段が安く手に取りやすいですね。
黄金千貫のおいしい食べ方は?
おいしく食べるにはちょっと工夫が必要
さて、ここまで見た目について簡単に説明してきましたが、いちばん気になるのは
『味はおいしいの?』
『普通のさつまいもと同じように使えるの?』
…といった点でしょう。
先に結論を言うと、
…です。
というより正確には
『同じように料理すること自体は可能だが、同じような出来上がりにはならない』
と言ったほうがいいかも。
何故ならこのいも、甘みが薄いのです。
最初にも書いたんだけど、本来焼酎の製造において本領を発揮するいもだから、ほかの食べ方だとちょっと力を発揮できないところがあるかな……
例えばさっきも上げた写真ですが『焼き芋』。普通の焼き芋はほっくりまたはしっとりした食感で甘みが強いのですが、黄金千貫の焼き芋は味が薄く、果肉もちょっとボロボロとしています。決して悪くは無いんですが、あまり焼き芋には向いてないかなぁという印象。
あくまで上記は一例ではありますが、いずれにしても普通食べる甘いさつまいもをイメージしていると物足りなさを感じてしまうでしょう。なので『そもそも素材自体の味は薄い』という情報を先にインプットしておいたほうがよさそう。
逆に言えばクセが無いので『甘いさつまいもが苦手な人』にとっては食べやすいかもしれません。好みの問題もありますからね。
料理する際のポイントは?
あくまで今まで個人的に経験してきたことから書いてるんで人によっては違うかもしれないけど、参考までに。
おおまかなポイントは以下の通り。
素材そのものの味が薄いので、つぶして調味料を混ぜ込んだり、細くカットして味の付く面積を広くするとよさげ。つぶしたものは砂糖を加えればしっとりし、成形にも全く問題ありません。
焼くとボロボロになる一方、煮ると少し崩れはしますがある程度形を残すことができます。煮たものはさつまいもらしいねっとりとした食感。
甘くないというのは『さつまいも』としては一見デメリットしかないように思えますが、逆に言えば特有のクセがなく調味料との相性は良いので、『料理の材料』として考えればメリットのある食材と言えます。
要は『工夫次第で美味しく食べられる』ってこと!
経験上、元々甘いor甘辛いような味付けのレシピならば分量を変えなくてもそこまで問題ありませんでした。もし通常のさつまいものレシピを使う場合はまず分量通りに作って、味見をして足りなければ調整する…くらいでいいと思います。
食べ方の例
一応、手軽に作れそうなもので黄金千貫に合う料理を上げておきます。よかったら参考にどうぞ。
味噌汁
手軽な方法のひとつは『味噌汁の具として使う』方法。
皮を残さないと特に割れやすいので、できれば皮付きのまま使う(気になれば剥いてもOK)、少し大きめにカットするなどするとよさそう。あとはあまり強火にしないこと、火が通ったらできるだけ早めに調味を済ませる(必要以上に茹でない)などに気をつけて。
さつまいもやかぼちゃなどの甘い具が苦手な人におすすめ。
味噌の種類はお好みで。
かりんとうもどき
何て呼んだらいいかわからなかったんでとりあえず『かりんとうもどき』(画像には揚げ焼きって書いちゃったんですが『揚げる』と表現するほどは油は使ってないです)。炒めてから最後に砂糖と塩で味付けする簡単な料理。おやつにもおかずにもなります。かりんとうよりはやわらかく食べやすい仕上がり。
上写真は『小さめの黄金千貫2本、砂糖大さじ3、塩少々、油適量』で作ったもの。砂糖はギリギリ多いかなという気もしたのでもうちょっと少なめでいいかも(多すぎると砂糖が固まってしまうので……)
②少し多めの油をフライパンにひいて中火で熱する。※1
③ペーパーで芋の余分な水分を拭いて、フライパンに入れる。※2
④軽くかきまぜてからフタをし、火が通るまでフライパンをたまにゆらしながら数分かけて火を通す。
⑤火が通ったら砂糖を入れてかきまぜて完成。
細切りするのめんどくさいんだけど、細かくカットしたほうが小さめのフライパンでもたぶん入りきるし、火が通る時間も短く味も絡みやすいのでオススメ。
茶巾絞り
最後に、ちょっとこちらは手間がかかりますが茶巾絞りを紹介。
これは数年前に作った時の写真で細かい分量はちょっと覚えていないのですが(すみません)、甘みが薄いとはいえそこまで多く砂糖を入れた記憶は無いので、とりあえず普通のさつまいもで作るレシピでやってみて、もし味が薄かったら足す感じでいいんじゃないかと思います。
②水から茹でて、火が通ったらザルにあげ、熱いうちに潰す。
③砂糖(お好みで塩少々)を加えてよく混ぜる。
④ラップに適量のせて丸め、上をしぼって巾着の形に整える。
多少手間はかかるものの、手順自体はシンプルで失敗が少ないのが利点。つぶした芋はそのまま使ってもいいのですが、ザルや濾し器で濾したほうが食感はなめらかになります。普通のさつまいもの場合もですが、たまにスジが多いものもあるので、濾すことでそれを除くこともできます。なので時間に余裕があればやったほうがいいかもしれません。
抹茶とかココアを混ぜてもきれいだよ。その場合は芋を濾しておかないと色ムラが出やすいから注意してね。
…と、今紹介できるものだとこんな感じでしょうか。
食べ方についてはまだまだいろんな可能性を秘めてると思うので、今後もおいしい食べ方について模索していこうと考えています。紹介できそうなものがあればまた追記しますね。
23.09.27:全体的にリニューアル。画像を新しいものに差替、料理法についての項目を追加。